妊娠期の栄養が子どもの未来をつくる ー最新研究が示す、たんぱく質・食物繊維不足と日常での補い方―/山梨大学大学院総合研究部医学域疫学講座 准教授 三宅 邦夫
筆者紹介

三宅 邦夫
山梨大学大学院総合研究部医学域疫学講座 准教授
ひと口で必要な栄養が整い、良質な食物繊維が含まれており 、日常生活に取り入れやすい 新しい食べる"栄養ケア"として期待されます。
最新の研究から、妊娠期の母親のたんぱく質や食物繊維不足が子どもの発達に影響することが示されています。さらに、現代の女性はたんぱく質・食物繊維・鉄・カルシウムなどが不足しがちです。
Dear meのたんぱくキューブでは、こうした不足しやすい栄養素を間食の時間で無理なく補えるよう設計された食品です。
最新の大規模研究で明らかになった妊娠中の「栄養不足」と子どもの発達の関係
近年、健康志向の高まりによって「低糖質」「カロリー控えめ」といった食品が注目されています。 しかし国民健康・栄養調査では、日本人の多くがたんぱく質や食物繊維を必要量に満たしておらず、 慢性的に不足していることが指摘されています。
特に女性や若年層では栄養摂取量の低下が顕著であり、妊娠期における母親の栄養不足が、 胎児や子どもの発達に影響を与える可能性が、近年の科学研究によって明らかになりつつあります。
本記事では、環境省が全国規模で実施する 「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」 を用いて行われた2つの研究を紹介します。
【研究1】妊娠初期のたんぱく質不足が子どもの発達に影響
本研究には約7万7千組の母子が参加しました。 妊娠中の食事調査から「1日に摂取するエネルギー量のうち、何%をたんぱく質が占めるか」を算出し、 母親を以下の3群に分類しました。
- 正常群(13%以上)
- 低たんぱく群(9.4〜13%)
- 極端に低たんぱく群(9.4%未満)
子どもが3歳に達した時点で、ASQ(Ages and Stages Questionnaire)を用い、 コミュニケーション、運動、微細運動、問題解決、社会性の5領域について発達状況を評価しました。
極端なたんぱく質不足の母親から生まれた子どもでは発達遅延のリスクが高まる
解析の結果、妊娠前〜妊娠初期にたんぱく質摂取割合が極端に低かった母親から生まれた子どもでは、 標準的な摂取の母親と比べて、3歳時点のコミュニケーション、微細運動、 問題解決能力に発達の遅れが見られる傾向が認められました。
特に「妊娠初期」の栄養状態が強く影響しており、 胎児の脳や神経系の基盤が形成される重要な時期であることを踏まえると、 妊娠初期の栄養管理が極めて重要であることが示唆されます。
極端なたんぱく質不足の背景には、偏った食生活が関係
たんぱく質比の低い母親には、以下の特徴が見られました。
- 魚・肉・卵・野菜など多くの食品群の摂取が少ない
- 穀類、清涼飲料水、お菓子類の摂取が多い
- 朝食欠食が多い
単に「たんぱく質が不足している」だけでなく、 食事全体が偏っていることが背景にあります。
研究が示すこと:妊娠前からの栄養管理が重要
動物実験では、妊娠中のたんぱく質不足が胎児の脳神経の発達異常や行動異常を引き起こすことが 報告されています。本研究は、それらの知見を日本の大規模データで裏づけた初めての成果です。
妊娠が判明してから食生活を整えるのでは間に合わない可能性があるため、 妊娠前から栄養バランスの整った食事を心がけることが大切です。
【研究2】妊娠中の母親の食物繊維不足が子どもの発達に影響
第二の研究では約7万6千組の母子を対象に、妊娠中の食物繊維摂取量を調査しました。 摂取エネルギー量の違いを考慮し、「1,000kcalあたりの食物繊維量」を算出し、 摂取量に応じてQ1〜Q5の5グループに分類しました。
食物繊維が最も少ない母親から生まれた子どもでは発達遅延のリスクが高まる
妊娠中に食物繊維摂取量が最も低いグループの母親から生まれた子どもは、 最も高いグループと比べて、3歳時のコミュニケーション能力、微細運動能力、 問題解決能力、個人・社会能力の発達の遅れが見られました。
背景には、腸内細菌が関係
食物繊維は腸内細菌によって分解され、短鎖脂肪酸という有益な物質を生み出します。 これらは炎症を抑え、免疫調整作用を持ち、胎児の脳発達にも寄与することが分かってきています。
これは「脳腸相関」という考え方とも合致し、 妊娠中の腸内環境が胎児の脳の発達に影響する可能性を示しています。
専門家が考える「本当に健康に良い間食」とは?
「糖質オフ」「カロリー控えめ」だけでは、真に健康的とは言えません。 本当に健康に良い間食とは、以下の条件を満たすものです。
- たんぱく質をしっかり補える
- 良質な食物繊維が含まれる
- 鉄・カルシウムなど不足しがちな栄養素を補える
- 腸内細菌を育て、心身の健康につながる
ただ空腹を満たすだけでなく、 「未来の健康を支える間食を選ぶ」 という発想が、これからますます重要になります。
参考文献
-
厚生労働省. 国民健康・栄養調査(令和5
年)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r5-houkoku_00001.html - Miyake K, et al. Maternal protein intake in early pregnancy and child development at age 3 years. Pediatr Res. 94(1), 392-399 (2023).
-
Miyake K, et al. Maternal dietary fiber intake during pregnancy and child development:
the Japan Environment and Children's Study. Front Nutr. 10, 1203669 (2023). -
Gould JM, et al. Mouse maternal protein restriction during preimplantation alone
permanently alters brain neuron proportion and adult short-term memory. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 115, E7398–E7407 (2018). -
Kim S, et al. Maternal gut bacteria promote neurodevelopmental abnormalities in mouse
offspring. Nature 549, 528-32 (2017). -
Liu X, et al. High-fiber diet mitigates maternal obesity-induced cognitive and social
dysfunction in the offspring via gut-brain axis. Cell Metab. 33, 923-38.e6 (2021)






